高齢歯科医師のための豊かな将来図

平成20年6月23日

北海道大学歯学部同窓会関東支部 御中 

DBMコンサルティング

宮原 秀三郎

 

 

 歯科医師としての技能が通用する間は、いつまでも現役として活躍してもらいたいと思います。しかし、体力の衰えと視力の低下は如何ともし難いものがあります。

 そのような宿命を負いつつ尚現役を続行するためには、次のような形態が考えられるのではないかと思い、ご提案申し上げたいと思います。

 

基本としては、今まで築いてきた実績と信用をそのまま維持発展させることが重要です。そのためには、まずご自身の果たし得る役割を認識することです。

 

@『十分にできること』と、『十分にはできないこと』を区分する

A『十分にはできないこと』はできる人(若いドクター)にやってもらう

B『十分にできること』はやり方を考える

 

 この3点について割り切れるかどうかです。一般の会社で言うと、一代で会社を起こし発展させてきたワンマン社長が、そろそろ若い世代に社長職を譲るときがやってきます。そのとき、現場の陣頭指揮は若い社長に任せ、自分は一線を退くものの、代表取締役会長として、あるいは相談役として、それまでの人脈や経験を生かした仕事に就き、会社に貢献することになりますが、そのような立場に似ていると考えてください。

 従ってもし、医療法人であれば、理事長兼院長という立場を理事長だけにし、院長職を若いドクターに譲ることです。個人事業であれば、若いドクターを院長とし自分は相談役という肩書きでも良いでしょうし、医療アドバイザーでも良いと思います。要は、日々の診療活動における意思決定権を院長に譲ることが基本になります。

 その上で、自分ならではの『十分にできること』を身の丈に合った方法で行い、従前からの歯科医院の価値を更に高めることができれば素晴らしいことだと思います。但し、報酬については院長時代の半分程度で我慢する覚悟が必要です。

 では考えられる『会長』職、あるいは『相談役』職としての歯科医院での仕事にはなにがあるでしょうか。

 

@健康相談

A急患対応  状況確認と応急処置

B古くからの患者の治療

 

などが考えられます。特にAについては、急患枠を設けたりユニットを空けておいたとしても、診るドクターがいなければ、予約診療を守ることができませんので、大変貴重な役割であるといえます。

 

また、それ以外の独立タイプとして

 

クリーニングと健康相談専門クリニックの開設者

 

が考えられます。あえて言うと本院の付属医院として独立させ、そこの開設者になることです。歯科治療はお適わないものの正規の歯科医院として、数人の歯科衛生士を雇用し、歯の定期クリーニングと健康相談を行い、口腔内のチェックを行う仕事です。歯科衛生士だけでは不可能な付属施設の開設が行え、本院との連携が機能すると大変良い循環となるでしょう。ここでの立場は院長で、運営上の責任を任されることになります。

 

 医院の所有権と運営者との法的な関係や雇用関係については個別に検討する必要がありますが、概略としての、高齢歯科医師が自らの歯科医師としての生きがいをどのような形で継続していったらよいのか、といったテーマの一つの指針として検討材料にしていただければと思います。

 

 尚、院長職を譲る相手は、必ずしも実子である必要はありません。むしろ血縁関係にない方が、うまくいく可能性は高いともいえます。ご自分の価値観を大きく変えることのない、腕と人柄のしっかりしたドクターであれば、あえて世襲制にこだわらない方が良いと思います。

 

これからは開業好立地はほとんどなくなりますので、実績のある医院を将来譲り受ける含みを持って院長職を引き受ける若いドクターはそれなりに多くなるのではないかとみています。